コラム

「ひちぎり」って?お雛祭りには欠かせない和菓子!

和菓子「ひちぎり」
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どうも月島で和菓子カフェをやっている山の金時堂です!

今回は「ひちぎり」について。

草餅や桜餅、浮島などに比べるとマイナーで、聞いた事のない方もいらっしゃるかと思いますが、春の和菓子として知られています。

「ひちぎり」はひな祭りに食べられる和菓子なのです。

ひちぎりが登場する関西のひな祭り

「え?ひな祭りの和菓子と言ったら「ひし餅」とかでしょ?」とお思いになられた方もいらっしゃるでしょう。

逆に当たり前とお思いになられた方もいらっしゃるはず。

というのも、「ひちぎり」は関西(主に京都)で食べられる和菓子なんです。まだまだ全国的には少ない和菓子なのですね。

それでも最近は関東の和菓子屋さんでも、たまに並んでいるのを見るようになりました。私どもの山の金時堂もその内の一軒なんです!

「こなし」という生地

「ひちぎり」はまだまだマイナーなのですが、その生地には「こなし」と呼ばれるものが使われます。

こなしを使用した和菓子自体も関東ではほとんど見かけないと思います。

使い方は練り切りと同じように使うのですが…

「練り切り」は餡に求肥を混ぜて鍋で練っているのに対し、
「こなし」は餡に小麦粉を混ぜて蒸しているという違いがあります。

見た目は似ていますが、その違いから、食感が練りきりよりもちょっと硬めな弾力のある生地になります。

こういう素材による微妙な違い、色んな和菓子にありますよねー!

羊羹(ようかん)と外郎(ういろう)の違い
↑この記事のタイトルは羊羹と外郎の違いですが、記事内で練り羊羹と蒸し羊羹について触れています。これも微妙な素材の違いなんです。

引きちぎった形状

月島の山の金時堂の「ひちぎり」は、蓬(よもぎ)を練りこんだこなしでこし餡を包み、大和芋を使った餡をきんとんにして飾っています。

白は「雪」、緑は「大地」、ピンクは「桃の花」

これは「雪解けして緑が現われ、花が咲く」という春の訪れをイメージしています。

様々な形状の中に共通点

ですが、色などはお店によって様々で、

生地も蓬を入れた緑でなく、白やピンクで作る場合があったり、
餡を生地で包まず、生地の上に載せる場合があったりします。

ただ、譲れない共通点それは…

ここ!スライムみたいですよね。

この引きちぎった跡こそ「ひちぎり」という和菓子の名前の由来でもあるんです。

ひちぎりの由来

ひちぎりには何故こんな引きちぎった跡がついているのか…。ひちぎりの由来について見ていきましょう!

いただき餅

時は平安時代。

公家が「自分の子供の前途を祝して、子どもの頭上にお餅を三度触れさせる」という儀式がありました。

そのお餅は丸いお餅の中央を窪ませて、そこに餡子を載せたもので、「戴餅(いただきもち)」と呼ばれておりました。

そのお餅には蓬やハハコクサなどが練りこまれており、邪気祓いの意図も含まれていたと考えられます。

春には草もちを食べるべし!五行から考えると?
↑こちらには蓬の邪気払いの力や、デトックス効果について書かれています。ひちぎりにも使われている蓬は体や精神にも良い効果をもたらしてくれそうです!

てんやわんやの宮中で引き千切り!!

子供が生まれたときの宮中はかなり忙しかったのでしょう。

この戴餅を作るにあたって、人手が足りないことが多々あったそうです。そこでお餅を丸めるという工程を省略し、お餅を引きちぎったら、そのまま出したそうです。

引き千切り→引千切(ひちぎり)

という流れになったみたいです。

確かに引き千切ったままの和菓子って、珍しいですよねー!

…実は引き千切った形を表現するのは、現代になっては逆に手間がかかると思うこともあります。

それはひちぎりにお米から作ったお餅ではなく、「こなし」を使うようになったからかもしれません。

まとめ

今回は「ひちぎり(引千切)」という和菓子について紹介しました。

今回のひちぎりの由来は一説なので必ずしも正しいとは限りませんが、宮中であっても引き千切ったままで許されていた… なんだか厳しいイメージがありましたが、実は色々なことが許されていた時代だったのかもしれません。

月島の山の金時堂でも「ひちぎり」を出すことがありますので、是非お越し下さい!

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