コラム

「こなし」とは?京都で良く見かける和菓子!

わびさび感
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月島で和菓子カフェをやっている山の金時堂です!

皆様は「こなし菓子」ってご存知ですか?

京都などでは多く見かける和菓子なので、関西地方と縁のある方なら知ってるかも。

一方で関東地方ではほとんど見かけることが無い和菓子なので、知らない人も多いはず。

以前「ひちぎり」のエントリー「こなし」もチラッと紹介しましたが、今回は「こなし」メインで紹介していきます!

【ひちぎりについてはコチラ!】
「ひちぎり」って?お雛祭りには欠かせない和菓子!

「こなし」とは

ひちぎりなどのこなし菓子に使われる「こなし」

和菓子「ひちぎり」

一見練り切りと同じように見えますが、別物です。

「求肥(ぎゅうひ)」ではなく「小麦粉」

練り切りに用いる練り切り餡(生地のようなもの)は、「餡子に求肥(ぎゅうひ)を混ぜて鍋で練る」という製法が取られます。

一方で、

こなし菓子に用いるこなしは、「餡子に小麦粉を混ぜて蒸して混ぜる」という製法が取られています。ここで混ぜる工程を特別に「でっちる」とも呼ぶことがあります(表現としては「混ぜる」よりむしろ「でっちる」の方が多いかも)。

小麦粉

細かい違いはまだあるかもしれませんが、求肥か小麦粉かという違いが一番大きいと思います。

こなしの食感

「こなし」の食感は、「モチッ」とか「シコッ」とか噛み応えがある表現が合うと思います。

小麦粉を使っているので、練り切りよりもちょっと硬く、しっかり噛んでるっていう感じがするんですよ。

おなかにたまる感じも強いですね。

わびさびの精神

京都の人は練り切りよりもこなし菓子が好きな方が多いそうです。職人さんにも求肥を使った練り切りを一切作らないという方もいらっしゃいます。

ある方からは、それは「わびさびを愛する精神が強いから」と伺いました。

わびさび感の写真

というのも、白餡って熱を加えると黄色くなるんです。さらに小麦粉を加えることで黄色さが増します。

そうして出来上がった生地は「黄色みがかったひなびた色味」。

練り切りのように「真っ白!」ということにはなりません。

そのような生地に着色していくのですから、どんなに色をつけても、ややひなびた色合いになります。

その色合いが京都のわびさびの精神に通ずるのだとか。

な、なるほど!

乾燥しやすく、乾燥に強い?

こなしは「乾燥しやすい」とも「乾燥に強い」とも言われます。

一見、逆のことを言っているみたいなのですが、実は嘘ではないような気がします。

こなしは「乾燥しやすい」和菓子です。表面がサラっとするのが早いんですね…。少し放置していると、乾燥の膜を張ったような状態になってしまいます。

…でも、表面が乾燥してもそれはそれで美味しいんですよねェ。これ、「乾燥に強い」ということだと思うんですよ。

「乾燥しやすい」けど、乾燥しても美味しいから「乾燥に強い」。

関西の人の中には、あえて、「こなし」を買ってきて何日か放置してから食べる人もいらっしゃるそうです。

乾燥させたいので、「あえて」紙箱の中にむき出しで放置する…

これもわびさびなのかもしれません!

「虎屋」のこなし

「こなし」は関西地方では主流と申し上げましたが、関東地方でも「こなし」を作っている老舗和菓子屋さんがあります。

それは「虎屋(とらや)」

特に羊羹で有名ですよね!パリにも支店を出すなど、日本で最も勢いのある和菓子屋さんの一つではないでしょうか。

羊羹製 = こなし製

そんな虎屋さんの和菓子に「羊羹製」と付けられた和菓子があると思います。

羊羹製 林檎形(株式会社 虎屋)

画像をここに載せることはできませんが、見てみると思うはず。

「全然、羊羹っぽくない」

そうなんです。実は「羊羹製」っていうのは、羊羹ではなく「こなし」を使った和菓子なのです。

以前のエントリー「羊羹(ようかん)と外郎(ういろう)の違い」にて羊羹には色々な種類があることを説明申し上げました。

その中で「餡子に小麦粉等を混ぜて蒸して固めた物」を「蒸し羊羹」という旨の記載をいたしました。

こなしは「餡子に小麦粉等を加えて蒸して、混ぜた(でっちた)物」。

製法が通じていることから、虎屋さんは「こなし」を使った和菓子を「羊羹製」と呼んでいるそうです!

何故虎屋がこなしを使うの?

虎屋さんといったら東京に本社ビルがあるし、支店数も東京が多いことから関東地方で活躍している和菓子屋さんというイメージがあるかもしれません。

でも、こなし菓子を作っているんですよね。

関東地方ではこなし菓子より練り切りが売れる傾向にあります。「羊羹製」を練り切りだと思って買う人は多くいらっしゃるでしょうが、そこまでして「こなし菓子」を作るのには何か理由があるのでしょうか。

その理由は虎屋さんのルーツにあると聞きました。

室町時代に創業した虎屋さんは、後陽成天皇の時代から天皇家に和菓子を納めておりました。当時、天皇家の拠点は京都。つまり、虎屋さんのルーツは京都だったのです。

明治になって、虎屋さんは東京にお店を構えました(京都のお店も残しつつ)。

これは天皇様が京都から東京にお移りになられたから。天皇にお菓子を納める御所御用の菓子司(かしつかさ)として、天皇と共に東京に出てきたんですね!

そして関東でビッグな和菓子屋さんになった!初心忘れずと申しますか、伝統を重んじる精神があるみたいで、格好いいですね!

でもやっぱりただ伝統を重んじるだけではビッグになれないわけで。

同じお菓子でも、販売地域によって、素材を変えていたりもします(関東では練り切りだけど、関西ではこなしとか)。

天皇に和菓子を献上してきた「技術力の高さ」と「歴史」、地域や時代の変化に対応する「柔軟性」… 今も日本の和菓子屋のトップを走り続ける「虎屋」、恐るべし…!

まとめ

今回はこなしという和菓子の素材について紹介しました。

関東ではまだまだ練り切りが主流ですが、こなしも徐々に知名度が上がって欲しいなぁ… と思います!

わびさびって良いよね!

月島の山の金時堂でもこなしを使った「ひちぎり」等を出すことがありますので、是非お越し下さい!

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