月島で和菓子カフェをやっている山の金時堂です!
わらび餅(蕨餅)、夏に食べてもひんやりして美味しいし、冬に食べてもなんだか体があったまる感じがする不思議な和菓子です。
今回は「わらび餅」について。
わらび餅の粉
わらび餅は、わらび粉などを練った生地を使った和菓子です。
わらび餅の生地を練る際には、粉に砂糖と水を入れてが練ります。
極めてシンプル。もちろん粉と砂糖と水の比率も重要ですが、それが最適だとして…
わらび餅の味はその粉に左右されると申し上げても過言ではないのです。
本わらび粉
ベストは上質なわらび粉100%で作ること。
しかし「そうは問屋が卸さない」んです。これ、文字通りの意味です。
手に入りやすいわらび粉でも、100gで1,500円くらいの値段がつきます。
小麦粉だとしたら、結構良い小麦粉だとしても100gでせいぜい500円くらいですよね。
100gで1,500円というのは、あくまで本当に手に入りやすいラインのもので…
上質な本わらび粉ならもっともっと高額に…
これは誰かが暴利を貪っているということではなく、わらび粉の原材料である蕨(ワラビ)という植物が貴重になってきているので仕方のないことなんです。
それにわらび粉を作るのにも、
- ワラビの根を粉砕する
- 何度もろ過する
- 残って沈殿したものを乾燥させて抽出する
10kgのワラビの根からとれるわらび粉は、わずか70gと言われております。
さらに極寒の冬に冷水で何度も洗うという、とんでもない手間がかけられているということですので、その高価さにも頷けます。
その希少性から、ワラビの根からとった本わらび粉で「黒い宝石」という銘柄も存在するくらいです。
黒い宝石は「黒本わらび粉」という更に稀少なわらび粉なので、その名は伊達ではありません。
本葛粉(ほんくずこ)
高価なわらび粉。今はわらび粉に別の粉を混ぜて作られたわらび餅が多くなっています。
同じようなでんぷん系の粉として「本葛粉」があります。
本葛粉は葛の根から作られる粉。その製法もわらび粉と似ています。
…高価でないといったら嘘になりますが、わらび粉ほど高価ではありません。
というのも、葛という植物の希少性がワラビと比較して低いこともありますが、本葛粉の原材料である葛の根がワラビの根よりも大きいんです。
タピオカなど
その他にわらび粉に混ぜられる粉として、
- 芋粉
- タピオカ粉
などのでんぷんが挙げられます。
これらを混ぜることにより、原価を抑えたわらび餅を作ることできるようになります!
でんぷんのα化・β化
もちろん本わらび粉100%のわらび餅が一番美味しいと思います。
本わらび粉でしか出ない、わらびの風味、味、食感があります。
ただ気をつけて欲しいことが、本わらび粉100%で作られたわらび餅は劣化が恐ろしく早いです。
食べるのは、出来上がってから早ければ早いほど良いことはもちろんなのですが、翌日には持ち越せません。作られた当日中に召し上がって下さい!
別に腐るわけではないんです。食べてもお腹を壊すわけではありません。
しかし、食感が大きく失われ、美味しくなくなります。わざわざ高いわらび餅を買ってみたのに、それでは辛いですよね…
でんぷんがどのように粘りっぽくなるか?
わらび餅の劣化には、でんぷんのα化・β化という「でんぷんがどのように粘りっぽくなるか」という話が関係しています。
α化・糊化
お米を考えると分かり易いと思います。
お米って炊く前は硬いです。歯では噛み砕けないレベルかと思います。それはお米の中にでんぷんがみっちりと規則的に並んでいるからなんです。
そんな硬いお米をおいしく食べやすくするために炊くんですよね。
炊く際に我々が何をしているのかというと、お水にお米を入れて、熱を加えること。熱を加えることで、米のでんぷんが緩くなります。その隙間に水が入り込むことで、やわらかくなるんです!
これをα化・糊化(こか)と言います。
ふっくら炊けたお米の状態と思っていただければ大丈夫です。
β化・老化
でもご飯が冷めると、黄色くなったり、ポロポロしたり。とにかく美味しくなくなりますよね。
ここで何が起こっているのか… ただ冷めただけではないのです。
お米を炊く際に、水分をお米の中に込めたと思います。時間が経つとこの水分が抜けてしまうんですね。
こうしてα化の後に硬くなってしまうことをβ化・老化といいます。
ちなみにご経験からお分かりになると思いますが、α化ででんぷんの並び方に規則性が失われてしまっているので、β化しても元通りのお米に戻ることはありません。
本わらび粉はβ化が早い
α化・β化の例としてお米を挙げましたが、その速度などはでんぷんの種類によって様々で…
実は本わらび粉はβ化(老化)という劣化がとても早いでんぷんなのです。
もちろん、β化を遅らせるために、和菓子職人も力を尽くしておりまして、長時間高温で加熱することでβ化を遅らせようとしています。
必死で練る訳です。焦げてはいけないし、熱もしっかりいれないといけないので本当に力仕事です。
それでも、日保ちはしないし、冷蔵庫で冷やすこともできない。
タピオカ粉などを混ぜよう!
本わらび粉100%の本わらび餅が一番美味しいけど、高価で、日保ちがしない…
本わらび餅の需要は確実にあると思いますが、そうじゃない需要もありますよね。
そこで、先述のようにもうちょっと使いやすい粉を混ぜたものがわらび粉として売られています。当然、お値段も手頃。そのわらび粉を使えば、もう少し安価で、日保ちがするわらび餅を作ることができるというわけです。
タピオカ粉は特に劣化が遅いので使われやすいと思います。
タピオカ粉が混ざったわらび粉を使用することで、2日くらいは美味しく食べることができるわらび餅が作れます。さらに粉の配合によっては冷蔵庫も大丈夫。
ただ、粉には色々な品質があって、本わらび粉がいっさい配合されていないものもあります。
わらび餅を期待してこの粉を使うと、風味や食感はやはり残念な感じになってしまうかもしれません…
ちなみに、本わらび粉100%のわらび餅の特徴は、弾力と、色の黒さです。
東京だと文京区の「一幸庵(いっこうあん)」という和菓子屋さんが本わらび100%のわらび餅で有名ですかね!
本わらび粉自体が季節性の物なので期間限定ではありますが、毎年それを出し続けているというのは、本当に凄いことだと思います。
関東と関西のわらび餅
おまけとして…
わらび餅の形ついては、二種類のものをみかけるかと思います。
生地を一口大に切ってきな粉をまぶしたものと、生地で餡をつつんできな粉をまぶしたもの。
餡を包んだものは関西に多く、京風わらび餅と呼ばれたりもします。
餡をいれないのは関東に多いです。
わらび餅のまとめ
今回は「わらび餅」について書いてみました。
原材料の本わらび粉って想像を超える高級品でしたね…
山の金時堂ではまだ本わらび粉100%のわらび餅を作ったことはございませんが、なるべくそれに近いわらび餅を提供しようとしています!ときどきメニューに並ぶことがございますので、是非イートイン・お土産にどうぞ!
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